前回の「出会い編」に続き、今回はえんがわオフィスを「つくる(完成)」までの流れを、NPO法人グリーンバレー理事長の大南信也さんと株式会社プラットイーズ会長の隅田徹の2人に、えんがわオフィス広報担当の谷脇が聞きました。
(大南さんの敬称はタイトル・本文の一部で省略させていただきます)
<たにわき>
出会ってから後は、どんな流れになったんですか?
<大南>
普通会ったら最初はさらっと流して、
ちょっとのあいだ期間を置いて、その時にどんな反応があるのかを見るんよな。
<大南>
(泳がしている)その間に、繋がるべきものでないものは繋がらんのんよ。
最初ワァーと熱病みたいに来て、それがスーッとひいていって。
多分、(そこからは)両者の引き合いと思うんよな。
僕の方も何か感じるか? 相手の方も何か感じるか?
で、(関係を)持続できるかどうかの話やと思う。
スッと終わる場合もあるけど、今回はそれが続いていったということ。
結構、(隅田が)攻勢をかけてきたんよな(笑)。
<スミタ>
2回目(の神山訪問)までで、何人か神山の人を紹介してくれて、どんどん会っていった。
サイトウさんやケドヤンに会って、
さらにリュウちゃん・ツヨシくんと紹介してくれてと、、、
(いろんな人に会ったけど)ここはすっごいエッジの立った人が多いなぁと(笑)。
今から考えたら最初にキワモノばっかり紹介されてたんやけど(笑)。
<大南>
僕だけの目では自信も持てんから、できるだけ多くの人に会って見てもらって、
この人間てどんな人間なのか客観的な視点を集めていくんよな。
<たにわき>
実はみんな面接官だったと(笑)。
<大南>
(笑)ほうやな。
(いろんな面接官がいて)いろんなトラップがあって、
目に見えないハザードがあるんやな(笑)。
で、そこをすり抜けてきた人間が(今)神山に来てるということやな。
<スミタ>
(2回目の神山訪問で)こういう人たちがいるなら楽しそうだから、ここに決めた!
圧倒的に他に比べると役者が揃っとったんやな。
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2回目の神山訪問で隅田が神山にサテライトオフィスを作ると決めてからは、
大南さんたちからいろんな物件を紹介してもらい、
その中からダントツに事務所向けだった現えんがわオフィスの物件購入の交渉へ進む。
そして、隅田たちプラットイーズ側とその物件所有者との「お見合い期間」となる。
大南さんたち関係者が田舎のネットワークを利用した「田舎の説得戦略」で、
所有者へのフォローをコツコツと進めてくれたこともあって、
3ヶ月後にようやく購入OKの許可をもらったとのこと(価格はまだそれからの交渉)。
大南さん曰く、
田舎の人は「とにかく家が売れたらいい」という訳ではなく「飛ぶ鳥跡を濁さず」で、
売った先の人がどんな人なのかを充分に理解して、
売った後でも周辺住民に迷惑が掛からないことまでを納得した上でないと売らないという、
ある意味責任感の強い人たちとのこと。
隅田によると、この3ヶ月間ずっと面接を受けているような感じだったとのこと。
物件購入が決まってから、隅田はこれまた神山の人繋がりから偶然に建築家集団の「バスアーキテクツ」に出会う。
なんと彼らは既に、えんがわオフィス隣の劇場寄井座の改修ワークショップを行った後で、学生たちと「劇場商店街」という構想を練り上げていた。
その構想では、寄井座と現えんがわオフィスの間の塀は取っ払われて一体空間になっており、現えんがわオフィスは、大道具・小道具さんの家だったとのこと。
そんな構想を元に、隅田は彼らバスアーキテクツにえんがわオフィスの設計を任せることになっていった。
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<スミタ>
(えんがわオフィスの設計は)「オープン&シームレス」のテーマで、
バスアーキテクツの3人にやってもらうことになった。
それも建築家を探してた訳でもない時にたまたま知り合って、
ひょんなことで彼らに(設計を)やってもらうことになって。
たまたま彼ら(バスアーキテクツ)の建築様式も比較的シンプルでオープンで、
うちのテーマとうまく合致したのね。
<たにわき>
毎日使ってますが、
えんがわオフィスはほんまにめちゃめちゃオープン&シームレスですよね。
<スミタ>
たまたまバスアーキテクツの設計(思想)がプラットイーズのポリシーに似てたのよね。
<大南>
類が友を呼んだんやな。
彼らは(えんがわオフィス設計の前に)「(神山サテライトオフィス)コンプレックス(KSVOC)」の改修で、ガラス壁で覆うことを実験しとったのよ。
グリーンバレーの事業での設計には交通費しか出ないけど、
自由にやってねと(ということで)、実験をやってた。
で、それをえんがわオフィスに活かしている。
<たにわき>
最初から今のえんがわオフィスの設計通りだった?
<スミタ>
最初は今のえんがわオフィスとは違うものだったけど、打ち合わせを経て変わっていった。
こちらも中に入る身として最低限の利便性を確保せんといかんからなぁ(笑)。
ま、彼らはスケスケが好きやね(笑)。
でも、外国では外から丸見えのオフィスがあって、あれがいいなぁと思ってた。
誰がおるかわかるし、社員も見られている というのがいい感じだと思ってたのよ。
<たにわき>
えんがわオフィスを見てどう思いましたか?
<大南>
最初(えんがわオフィスの)パースを見たとき、「おもろいなぁ」と思った。
で結局(出来上がって)、地元の人の「古くなったら家はアカン、建て替えて便利で水で掃除ができるようなもんがいい」という、「古くなったら値打ちがない」という意識をガツンと打ち砕いた威力が凄かったなぁ。
<たにわき>
(隅田は)古いものを「残すために残す」のではなく、
「使うために残す」といつも言ってますよね。
<スミタ>
うちが(映像の)アーカイブ事業をしているからというだけでじゃなくて、
ほんとに純粋に投資としても古民家はいいのよ。
新しく家を建てても、建てた瞬間から中古になって価値が減損していくのよね。
でも古い家やったら、年数が経てば経つほど価値が出てくる。
同じお金を投入するんだったら、古い家を直していった方が将来価値は高い。
みんながそういう「将来価値」に軸を置いた投資をしたら、
町全体がものすごくいいもの(価値のあるもの)になる。
<大南>
(えんがわオフィスは)「見方を変える」ということに対してインパクトがあったなぁ。
いろんな考え方の人がおるんや!と。(いう気付きを地元の人に与えてくれた)
「古いものを触るより、新しく建てた方が安いし気持ちええでぇ」という価値観でずっと来てるところに、違う考え方もあるんや と。
で、現実にできたものが「あれっ?(すごい!)」って思うようなものだったら、
そこで人間て考えるよな。
そういう局面を作れば作るほど、やっぱり住んでる人も多様なものに対して対応できる、
味方できるようになると思うんよな。
<たにわき>
えんがわオフィスの前と後でどう変わった?
<大南>
規模的に最初考えていたサテライト(オフィス)というのは、MAX数人が2週間とか1ヶ月に一回ぐるぐる周って来るというイメージのところが、
(えんがわオフィスは)そのままそこにドカッと腰をすえて、それも20人もの人間が来るということになれば、インパクトがまったく違うし、
しかも、地元の若い子らが雇用されたのが結構(影響)大きいな。
普通(神山の)地元の人たちは、サテライト(オフィス)やっとっても、
私らには関係ないんよな と言っていた人が、
でも「孫が雇われた」ということになったら、見方がガラッと変わってくるよな。
(地元の人に)「関係ないことないんや」と(気付かせることに)なった、
その辺りの(えんがわオフィスの)力というのはメチャクチャ凄いな。
<たにわき>
地元雇用ってわかりやすいですよね。
<大南>
地元の雇用というのは、ほんまにわかりやすい。
こんなことになるんや!と(地元の人が気付く)。
ただチャラチャラと遊びで「自然がいっぱい!」みたいな感じで(外から人が神山に)来ると想像しとったんが、ガツンと仕事しに来て、しかも地域の人間も雇用となれば、もうインパクトが全然違うもんな。
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前回の出会い編と同様に「移住(誘致)は結婚と同じ」という大南さんの言葉通りに、プラットイーズが神山町に結婚相手として認めてもらうまでにも、またえんがわオフィスが完成するまでにも、いろいろとドラマがあったようです。
そしてそのどの場面でも「人」がキーであり、まさにヒトノミクス神山マジックでした。
また、完成したえんがわオフィスも地元の人に少なからず、多様性を感じさせるものでもあったという点はおもしろかったですね。
今回までは過去を振り返った談話でしたが、次回は今と未来についてうかがいます。
お楽しみに。
谷脇研児
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大南・隅田ご近所トーク
【1】えんがわオフィス誕生秘話~出会い編~
【2】えんがわオフィス誕生秘話~誕生編~
【3】神山メーカーズスクールとUターン
【4】枠をとっぱらった場 を残していく
【5】やったらええんちゃうん→未来に繋がる今を楽しむ